ナニワのスクリーンで映画を観るということ。

大阪の映画好きゾンビまんです。 映画館のスクリーンで映画を観るということ。

Category: 映画レビュー「わ行」

えIMG_2217
えIMG_2211
えIMG_2212
えIMG_2215
rIMG_2042
えIMG_2222

2024年1月7日、日曜日、シネ・リーブル梅田の様子です。
私はお昼をまたいで弟とラーメンを食いに行ってましたので、夕方から映画鑑賞でした。
16時からの『笑いカイブツ』、8割埋まる盛況でした。
とにかくシネ・リーブル梅田が入る梅田スカイビルは観光名所なので、外国人観光客でいっぱい!

わらか00


こちらは入場特典のポストカードの表面。裏はチラシと同デザインですので。




『笑いのカイブツ』
解説:「伝説のハガキ職人」として知られるツチヤタカユキの同名私小説を原作に、笑いにとり憑かれた男の純粋で激烈な半生を描いた人間ドラマ。

不器用で人間関係も不得意なツチヤタカユキは、テレビの大喜利番組にネタを投稿することを生きがいにしていた。毎日気が狂うほどにネタを考え続けて6年が経った頃、ついに実力を認められてお笑い劇場の作家見習いになるが、笑いを追求するあまり非常識な行動をとるツチヤは周囲に理解されず淘汰されてしまう。失望する彼を救ったのは、ある芸人のラジオ番組だった。番組にネタを投稿する「ハガキ職人」として注目を集めるようになったツチヤは、憧れの芸人から声を掛けられ上京することになるが……。

「キングダム」シリーズなどで活躍する岡山天音が主演を務め、仲野太賀、菅田将暉、松本穂香が共演。井筒和幸、中島哲也、廣木隆一といった名監督のもとで助監督を務めてきた滝本憲吾監督が長編商業映画デビューを果たした。
2023年製作/116分/G/日本
配給:ショウゲート、アニモプロデュース
劇場公開日:2024年1月5日

rえわ0

この映画は実話ベースのようですが、自分で「これしかない」と強く思い込んでいる青年の、「苦労は買ってでもした」という、道一筋の青春期を描いた作品でした。
私が映画『さかなのこ』を観たとき、磯村勇斗と共に「おもろい不良を演じとるヤツがおるな」と目を止めた、岡山天音が主役のツチヤを演じている。彼は『キングダム』シリーズでもノッてきましたよね。
 自分が破壊した為にボロボロで、貼り紙だらけの部屋に籠りパンツ一丁でお笑いネタを書く事に夢中になっているツチヤ。
彼はシングルマザーだかモテるおかん(片岡礼子)に愛されながら、成人式を迎えても屁理屈を並べて「そんな暇ない」と相変わらずネタばかり書いてる。
ツチヤのそんな調子はどこに行っても変わらない上に、とにかく若さが目立つツチヤには社会性が備わっていないから、どこでアルバイトをしてもすぐにクビになる。


rえわ1
rえわ2
rえわ3
rえわ4

傍から見ればツチヤはどこにでもいる世間知らずの若者なのですが、その一徹かつクレイジーな姿勢は周りの目に留まる。
それはいつもフライドポテト単品だけで粘っても文句を言わないハンバーガー店の店員(松本穂香)であったり、大阪の歓楽街で出会い、意気投合したピンク(菅田将暉)だったりする。
やがて6年が経ち、自ら劇場にネタ帳を売り込んだツチヤは、運よく放送作家の見習いになるのですね。
それを足掛かりに、ツチヤはあるお笑い芸人の西村(仲野太賀)に誘われ東京へ。
この映画のツチヤは常に思いつめた感じでめちゃくちゃ暗くて、いつでも自殺しそうな暴発キャラで怖いんですよね。しかもむちゃくちゃ打たれ弱く文句垂れ(爆汗)……
結局はお笑いコンビの成長を描いた芥川賞『火花』なんかと被る部分の多い作品なのですが、ツチヤの蒼さが刃物のようで私は感情移入しにくかったです。神経質な岡山天音さんの芝居は、若い頃の水谷豊さんの芝居を彷彿とさせた。

この映画の見所はもちろん岡山天音さんのエキセントリックな熱演なのですが、そんな彼をバックアップしようと張り切る脇役陣がいつも以上に良すぎる(爆汗)……
地元の大阪弁で水を得た魚のようになっている松本穂香さんと菅田将暉さん。
仲野太賀さんがクライマックスで披露してくれる漫才はホンマに面白かったし、映画『コーポ・ア・コーポ』に続いて大阪弁のオカンを演じた片岡礼子さんも最高なんですよね!

若い頃にお金もなくて必死のパッチやったなという経験のある方なら、劇中のツチヤを応援してあげたくなるかもしれません。
私もツチヤに負けないほど必死のパッチでしたが、「自分はこれしかない」というモノで生計を立てようとか、大きな夢もなかった。

rえわ5

近年の吉本新喜劇とか見ていても、ギャグより脚本の良さで笑いとってる。この作品のツチヤのような放送作家が一生懸命書いてるんだと思うのですが、私は漫才とかオモロイ芸人という人達は、その人自体がもともとおもろくて、笑いとは頭で考える事ではないと思っています。毎年「М1」とか、私は聞こえないから画だけ見てるんですが、おもろいヤツはそいつらの間合いとかオーラを見ていればわかるものやから不思議ですよ。
でも、普段が病みかけで全然オモロないツチヤが現実で成功している事に驚きました。

劇中、いろんなアルバイトをクビになるツチヤの姿を見ていると、昭和の青春ドラマの名作『俺たちの旅』を思い出した。

[2024年1月7日、『笑いのカイブツ』、シネ・リーブル梅田④にて鑑賞]

rIMG_0686rIMG_0681
rIMG_0683
rIMG_0688
rIMG_0693

2023年9月3日、日曜日、大阪ステーションシティシネマの様子です。
朝から暑く、シアター内も生温い。私は見てしまったんですが、ここのシネコンの設定温度が27℃で、場内はほぼ無風。
私は映画の途中から汗がじわっとしてきて、アカン体臭が出てきそうに(爆汗)・・・。
映画『私たちの声』、お客さん私を含めて5人。最初は4人やった。
私は唯一の出入り口からは対角線で一番遠い最後尾にいたからよく見えたんですが、出入り口の死角に身を潜め、場内が真っ暗になってからシアターのど真ん中に座った女性、よほどの人見知りか自意識過剰やで。迷惑です!


『私たちの声』
解説:世界各国の映画界で活躍する女性監督と女優が集結し、女性を主人公に描いた7本の短編で構成されるオムニバス映画。

女優タラジ・P・ヘンソンが監督を務め、ジェニファー・ハドソンがドラッグ依存と多重人格を克服しようと闘う女性を演じた「ペプシとキム」、「トワイライト 初恋」のキャサリン・ハードウィック監督がマーシャ・ゲイ・ハーデンとカーラ・デルビーニュの共演で、コロナ禍のロサンゼルスで出会った医師とホームレスの交流を描く「無限の思いやり」、アルゼンチンのルシア・プエンソ監督がエバ・ロンゴリアを主演に迎え、亡き妹が遺した幼い娘との人生を考えるキャリアウーマンを描いた「帰郷」、「きみはいい子」の呉美保監督が杏とタッグを組み、育児と仕事に翻弄されるシングルマザーの多忙な日常をつづった「私の一週間」、イタリアのルチア・ブルゲローニ監督&シルビア・カロッビオ監督によるアニメーション作品「アリア」などを収録。

ダイアン・ウォーレンが手がけ、ソフィア・カーソンが歌唱した主題歌「Applause」が第95回アカデミー賞で主題歌賞にノミネートされた。
2022年製作/112分/G/イタリア・インド・アメリカ・日本合作
原題:Tell It Like a Woman

らいわた4

いきなり話題が逸れますが、私は短編で構成されるオムニバ映画は大好き。
私のオカンは読書嫌いな私と違い、小説や極道の伝記本などが大好きで(爆)・・・そんなオカンの影響というか、若い頃に私も小説をいくつか読んだ事がありますが、当時流行っていた赤川次郎さんだとか笹沢左保さんだとか。
そんな小説群の中に、作者は忘れたが、『街の観覧車』というオムニバス小説があり、その作風に軽い衝撃をおぼえたものです。
要は、いくつかの短編が巧みに繋がっていたんですよね。
だから私は映画の短編集でも、個々の短編が交わるように繋がっているのが好き。
今回私が見たワールドワイドな短編集映画『私たちの声』は、7つの完全に独立したドラマを集めたものだった。

らいわた1

なんか箇条書きみたいになってしまいますが、順番に・・・。
「ペプシとキム」は、幼い娘をシャバに残しながら収監されたキム(ジェニファー・ハドソン)は麻薬ジャンキー&多重人格なんですわ。そんなキムは同じ房で共になった黒人女性の勧めで、ジャンキーから立ち直る為のセラピー参加に応募する。
抽選で選ばれたキムの半年に渡る更生への戦いが始まる。
重く口を閉ざすキムに対し、饒舌なペプシから語られたキムの人生がえげつない。
5歳のときから大人による性的悪戯にはじまり、十代では三人の男に輪姦され、薬漬けにされたという・・・。

「無限の思いやり」は、保護された若い女性ホームレス(カーラ・デルヴィーニュ)をホテルの屋上でケアする医師(マーシャ・ゲイ・ハーデン)のお話。
コロナ過でのマスク姿が印象的なエピソードで、生ごみを持ち込んで漁っている若く綺麗なホームレスをシャワーに入れるまでがどれだけ大変かと。ホームレスは身動きできないほど、身を守る為に重ね着をしているから、医師と助手はホームレス女性の着ている衣類をハサミで切っていく。
ちなみに、上記出だしの二つのエピソードは、それぞれ主人公が実在の人物であることが称えられています。

「帰郷」は、異国で成功を収めた女性(エヴァ・ロンゴリア)がイタリアの海辺に帰郷する。
多感な年頃の時に、故郷に置き去りにしたような妹が自殺したから。
女性は亡き妹の遺言で、初めて会った小さな姪を引き取る事に。強く拒否する女性なのですが、「そんな事わかってるわよ。私は自分の計画した道を行く」とばかりに、船にひとり乗る少女を追いかける女性・・・。

「私の一週間」は、シングルマザー(杏)の、仕事と子育てに追われる日々を描くという、どこにでもあるお話。

「声なきサイン」は、なかなか家族との約束も守れないでいる獣医師(マルゲリータ・ブイ)が、帰ろうとしたときに犬を持ち込んできた不審なカップルに遭遇する。医師は女性が助けを求めている事に気づく・・・というお話。

「シェアライド」は少し幻想的な夜の街でのお話で、雨の日にタクシーで相乗りする事になった美容外科医(ジャクリーン・フェルナンデス)が、途中下車したあとに街で見かけたその相乗りトランスジェンダー女性に惹かれる・・・というお話。

最後の「アリア」は自我を見つけ心を解放するキャラを描いたアニメ。

rえわた10
私アホなんで国はわからないのですが、凄く女優さんが綺麗で映画のマジックに溢れた「シェアライド」というエピソードで効果的だったのが雨。
私の息子が小学校に入った頃だから、今から約20年前に私は地域のソフトボールチームに所属していて、同じ区内の学校チームたちとリーグを形成していたので、学校の行事にもよく駆り出されたんですわ。
その年の学校PТA対抗ソフトボール大会の準備で河川敷にいたチームの数名は、お手伝いのママさんたちとテントの片付けとかしてたら突然のゲリラ豪雨で、その場にいた全員、バケツをひっくり返したような雨で全身びしょ濡れ。
夏やったんで、ジャージに白いТシャツ一枚しか着ていない女性たちのブラが、張り付いた白シャツが透けて丸見え。
水色と黒いブラのふたり(汗)、私らも含めて最初は困惑してたんですが、人間って、ある程度を越えて濡れすぎるとハイテンションになるんですよね!(爆汗)・・・。もう途中から女性ふたりが開き直ってゲラゲラ笑い始めて。
軽トラの後ろに乗って河川敷から学校へ帰る私たちを、濡れた女性ふたりは子供のような笑顔で「待て~」とか言って自転車で追いかけてきて。学校行事での一コマでしたが、みんなが豪雨のなか少年少女に帰ったあの瞬間は忘れられないです。
「シェアライド」の雨を見て、そんな過去を私は思い出していました。「うんうん、あるある」って(笑)・・・。

7つのエピソード。個人的には大好きなマルゲリータ・ブイが大活躍の「声なきサイン」がシンプルかつスリリングで、同じくシンプルすぎて一番感動したのが杏さんの「私の一週間」だった。
子供ふたりを抱えて働く世のシングルマザーがどれだけ大変かと。
女性が声を出して叫びたい問題の数々を提示したこの作品において、素朴かつストレートな杏の「私の一週間」が、一番胸にグサっと来た。すべての女性に感謝です。

最後に、凄く良かったこの映画のエンドロールに流れた主題歌を貼っておきます。

Applause (From “Tell It Like A Woman”) Official Music Video

https://www.youtube.com/watch?v=VAHorHpPqb4

 


[2023年、9月3日、『私たちの声』、大阪ステーションシティシネマ・スクリーン⑤にて鑑賞]

らいわた3

IMG_9049
IMG_9042
IMG_9044
IMG_9053
2023年5月20日、土曜日、TOHOシネマズ梅田の様子です。
こちらTOHO梅田の1番スクリーンが、プレミアムシアターになってから初めての鑑賞でした。私は一般シートですが。
映画『ワイルドスピード/ファイヤーブースト』、まずまずお客さん入ってました。
昨晩テレビで映画『レイダース・失われたアーク』を見てたのですが、約40年前にこちら旧・北野劇場のスクリーンで観たんですよね。終映時の拍手が忘れられません。今でもこの湾曲大スクリーンで映画を観れる私は幸せですよ。

『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』
解説: 世界的にヒットを記録したカーアクション『ワイルド・スピード』シリーズの10作目。主人公ドミニクと固い絆で結ばれたファミリーの前に凶悪な敵が現れ、激しいバトルを繰り広げる。ヴィン・ディーゼル、ミシェル・ロドリゲス、ジョーダナ・ブリュースターらおなじみのメンバーのほか、『スランバーランド』などのジェイソン・モモア、ジェイソン・ステイサム、ヘレン・ミレン、シャーリーズ・セロンらが出演。『トランスポーター』シリーズなどのルイ・ルテリエが監督を務める。

あらすじ:レティ(ミシェル・ロドリゲス)と息子のブライアンと共に穏やかに暮らすドミニク(ヴィン・ディーゼル)の前に、かつてブラジルで倒した麻薬王レイエスの息子ダンテ(ジェイソン・モモア)が現れる。父親が殺されたダンテは、ドミニクたちに復讐(ふくしゅう)を仕掛ける。
らわぶ1
毎回、ストーリーなんて無きに等しい(爆汗)、人気カー・アクション・シリーズの『ワイルド・スピード』
私は前作で遂に宇宙空間に飛んで頂点を極めたこのシリーズは、体が勝手に続編を観に劇場へ向く病気の持ち主なので(汗)・・・。
で、元々はこのシリーズの一作目、強盗団に利用される街の走り屋軍団に警官が囮捜査として潜入し、ドミニクの生き方に魅せられた警官と、ドミニク・ファミリーとの友情が熱い物語の軸である場合はむちゃくちゃ面白いんです。
どれだけアメコミ映画に匹敵するド派手な映画になろうとも・・・。
(この記事の終盤、少しネタバレに触れます。観覧注意で)

わぶ4 (2)
まず、ドミニクのファミリーがレースに興じる走り屋から、政府に目をつけられる強盗団になるまでのおさらいを含めた序盤は上々の滑り出しで。
過去においてドミニクに父親を殺された極悪事業家の息子ダンテ(ジェイソン・モモア)の復讐劇である本作がシンプルすぎて、実は中身がスカスカのバラバラ状態になっていく語り口が、CGてんこ盛りのアクションにぶっ飛ばされる様子が141分続く(爆汗)・・・。
総勢30人くらいで繰り広げられてる感じのこの作品は豪華キャストの無駄遣いに見えた。なぜかと言うと、ひたすらとっ散らかった印象のまま、まとめようという感じが見えずにクライマックスを迎え、一番ええとこで終わりやがったから(超爆汗)・・・。
そう、この作品は今年の夏に公開される『ミッション・インポッシブル』の続編と同じく、まだ次に続く二部作の前半みたいなんですよね(汗)・・・。
私はそんなん知らんから、この映画の作り手はペース配分間違えてるんちゃうか?と、ずっとバランスの悪い映画やな思いながら見てた(爆汗)・・・。

実は今回の物語で隠し味的に重要なのがドミニクの小さな息子の存在。
小学校から中学生になろうかという男の子。
おそらくこのシリーズは、その少年に託されて、次で最終章を迎える。
その前フリとしてはあまりにも乱暴やった気がします。
ここまできたら私も次の最後を見届けますけれど・・・。
[2023年5月20日、『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』、TOHOシネマズ梅田・スクリーン①にて鑑賞]

らわぶ2

IMG_8094IMG_8086
IMG_8090
IMG_8096
IMG_8099

2023年2月23日、木曜日(祝)、大阪ステーションシティシネマの様子です。
大阪は天気予報が外れてずっと小雨が降ってました。
映画『ワース』、お客さんボチボチで(汗)・・・。



『ワース 命の値段』
解説: アメリカ同時多発テロの被害者と遺族に補償金を分配すべく奔走した弁護士たちの実話を描くドラマ。監督は『キンダーガーテン・ティーチャー』などのサラ・コランジェロ、脚本は『キングコング:髑髏島の巨神』などのマックス・ボレンスタインが担当。テロ犠牲者の命を補償金で換算するという難題に挑んだ主人公を『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』などのマイケル・キートンが演じ、『スーパーノヴァ』などのスタンリー・トゥッチ、『ストレンジ・アフェア』などのエイミー・ライアンらが共演する。

あらすじ:2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ発生直後、政府は被害者と遺族を救済するための補償基金プログラムを設立する。弁護士のケン・ファインバーグ(マイケル・キートン)は特別管理人を任され、約7,000人の対象者に支払う補償金額の算出作業を開始。しかし、ケンら弁護士チームは遺族それぞれの苦悩と向き合ううちに、年齢も職種もさまざまな犠牲者たちの「命の値段」をどのように算出するのか葛藤する。厳しい批判にもさらされる中、彼らは法律家として遺族たちのために奔走する。


らわ2

この実話ベースの映画の冒頭で、学生を相手に「人生の値段」を問う弁護士のケン。
最後尾にいる学生を指名し、「君の郷里はどこだ?農業地帯だな。君の父親が農耕機械に巻き込まれて死んだとしよう。そんな君の父親の人生に値段を付けてみてくれないか」と問う(爆汗)・・・。
「凄く難しいですね」という学生たちに、ケンは「それが私の仕事なんだ」と。

2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件直後、米政府は補償基金を設立するのですが、その補償問題はヘタすりゃあ膨大になりすぎて国の経済を破滅に追い込むとさえ言われた。そんな議論の中で、特別管理人兼弁護士のケンは限られた補償金を約7000千人の遺族に分配する弁護団の責任者に任命される。
ある程度自信満々で最初の遺族たちへの説明会に挑んだケンでしたが、犠牲者の年収に応じて補償金を決めると言い終わらないうちから遺族たちの猛反発を食らう。
「どうして同じ人間の命の値段が平等ではないんだ!」「私の息子は消防士で、多くの命を救いに行って犠牲になった。株の運営で儲けてる人と同じにしないで!」等々・・・。
我々は自分たちでお金を出し合って社会貢献して支え合っているのですが、会社であろうが組合であろうが自治会であろうが、人間というやつは、みんなが納得するお金の分配というのが死ぬほどヘタですよね。
十人十色な訳ですから。
ケンは設けられた期日までに補償金に同意する遺族の数(目標80%)を集められる算段が得られず、途方に暮れてしまう。
そんな中、同じ会場にいたウルフ(スタンリー・トゥッチ)の言葉をヒントに、ケンはこの補償問題の本質に迫る事で、事態を大きく進展させる・・・というお話。
この映画が取り扱った問題はホンマに難しい。
補償問題が長引いている間に、一日でも早く支援してほしいという生活困窮者もいれば(子沢山のシングルマザーとか)、同性婚の為に、パートナーの補償金を受けられないとか(私は基本、同性婚とかは幸せならどうぞというスタンスやが、同性婚を認めて法律を変えろという意見には生理的嫌悪をおぼえる。我々は同性婚からこの世に生を受けた訳ではないので)・・・。

で、この映画のお話の素晴らしいところって、結局はお金ではない部分なんです。
「とりあえず区切りをつけて、前に進みましょう」という気持ちは国の補償基金機構も被害者も同じ。
ケンは遺族たち一人ひとりを訪問して、話しを聴く事にした。「規則でこういう決まりです」と上からの紋切り型ではなく、ハート・トゥ・ハートな交渉に方向転換した。
私が先日観た映画『対峙』でも描かれていましたが、人間とは対話してみると、大きく心が動くもの。
遺族たちは聴いてもらうことで悲しみを和らげたいし、話しを聴いたケンも相手の身になって補償問題を考えるように変化する。

この映画の最後、こうした公的基金が色んな歴史的災害や事件の被害者遺族や負傷者に支払われているというテロップと、荒れた海を見つめるケンの姿で終わる。
この作品のプロデューサーも務めたマイケル・キートンも素晴らしかった。
ひとつ難を言えば、地味に淡々と進行するので、映画としての盛り上がりに欠けるというのはありましたが、感情的になってはダメなんだと教えられているような映画でした。

[2023年2月23日、『ワース 命の値段』、大阪ステーションシティシネマ・スクリーン⑥にて鑑賞]

IMG_8074IMG_8069
IMG_8068
IMG_8076
IMG_8078

2023年2月19日、日曜日、大阪ステーションシティシネマの様子です。
今日の大阪は雨。
にもかかわらず、映画『別れる決心』、朝早くからほぼ満席でしたよ。


『別れる決心』
解説: 『オールド・ボーイ』などのパク・チャヌク監督によるサスペンス。ある滑落事故をきっかけに刑事と被疑者として出会った男女が、疑念を抱きながらも惹(ひ)かれ合う。『お嬢さん』などでパク監督と組んできたチョン・ソギョンが同監督と共同で脚本を担当。『黒く濁る村』などのパク・ヘイルと『ラスト、コーション』などのタン・ウェイが主演を務め、『死なない夫』などのイ・ジョンヒョン、『ソウル・バイブス』などのコ・ギョンピョらが共演。第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で監督賞を受賞した。

あらすじ:生真面目な刑事ヘジュン(パク・ヘイル)は、ある男性が山で転落死した事件を捜査することになる。取り調べを進める中、彼は被害者の妻ソレ(タン・ウェイ)に疑念を抱くようになるが、謎めいた彼女に惹(ひ)かれる気持ちを抑えることができずにいた。一方のソレもまた、ヘジュンに特別な感情を抱く。

raiわけ0


この映画、従来のえげつなくもエモいパク・チャヌク監督の作風を求めたうえで、予備知識なして観た私なんかは、「してやられた!」というか、正直、猛烈な肩透かしを食らった気分になりました(爆汗)・・・。

真面目を絵に描いたような刑事ヘジュンは、山で崖から転落死した金持ちのオッサンの事件を捜査するようになる。
ヘジュンは遺体の状況から落下途中で3回バウンドしてると聞くや、わざわざロープで崖を登って現場検証するというね・・・真面目を絵に描いたような男なんですから(爆汗)・・・。
さっそくヘジュンは死んだオッサンの妻で、「中国人だから韓国語が下手でスミマセン」というソレを尋問する。
ソレは夫の死もどこか他人事で、取り調べ中にも笑みを浮かべたりなんかするものだから、ヘジュンは不審死に関与しているのではないかと、ソレに疑いの目を向ける。

捜査と同時に描かれるヘジュンのプライベート。
ヘジュンは綺麗でクールな奥様に、「セックスレス夫婦はかなりの確率で離婚するらしいから、最低週に一回はお願いね。たとえ機嫌が悪くて喧嘩中でもよ」なんて、絵に描いた餅に愛液を垂らしたような事を言われるんやけど(爆汗)・・・いざヤルと、奥様はどこまでもクールなマグロ状態で、ソコも真面目を絵に描いたような感じやから、なんともはや(汗)・・・。

で、シンプルかと思われたこの映画、枝葉を含めてトリッキーに脱線していく。
例えばソレを張り込み中のヘジュン、双眼鏡で監視しているうちに、いつの間にか姿がソレの隣にいたりとか(超爆)、現在や過去に加えて現実と妄想が混在するややこしい展開へなだれ込むから、私はこの映画、正直に言って最初と最後以外の真ん中がちんぷんかんぷんで(爆汗)・・・。
事件の真相など、私が追っていた部分に明確には答えてくれなかったこの映画、ヘジュンとソレが内面で猛烈に惹かれ合っているという事だけは分かる。
(ヘジュンがソレを庇うように立ち回る事が、かえって事件捜査等を難解な印象にしている)

ハイっ!
ここから少しネタバレに触れます。観覧注意で。


コレ、パク・チャヌク監督映画の代名詞である、暴力とエロティシズムを排除したメロドラマなんですよね。
そのコンセプト自体がどんでん返しレベルなのが凄いけど。
監督はぶっちゃけ、いつもの自分と違う作風から、繊細な感情の機微を感じてもらおうと試みている。
まるでクラスの真面目クンが、転校生のいじめられっ娘を気に掛けたら止まらなくなった・・・みたいな映画やもん。

満潮を迎える砂浜を使ったラストは、むちゃくちゃパク・チャヌク監督らしかったけれども。
この映画はね、ヘジュンとソレのキャラから「どんだけ汲み取れるか」で、かなり印象が変わると思う。
私はこの映画に“恋愛要素”は求めておらず、「素股できる店やいうて行ってみたら、生本番いけたで」みたいなモノを期待して対峙したので、「絵に描いたような真面目なロマンス」の本質を汲み取れなかった。
この映画の鑑賞に際しては、私の「観に行く口」が残念でした。マスクの中で軽く舐めて濡れていたのに(爆汗)・・・。

[2023年2月19日、『別れる決心』、大阪ステーションシティシネマ・スクリーン⑦にて鑑賞]
reiわけ7

↑このページのトップヘ