ナニワのスクリーンで映画を観るということ。

大阪の映画好きゾンビまんです。 映画館のスクリーンで映画を観るということ。

2021年11月

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2021年11月28日、日曜日、梅田ブルク7の様子です。
私が観た映画『ダーク・アンド・ウィケッド』にも、たくさんの人が詰めかけていた。


『ダーク・アンド・ウィケッド』
解説:シッチェス・カタロニア国際映画祭で2部門を受賞したホラー。農業を営む生家を久々に訪れた姉弟が恐ろしい体験をする。メガホンを取るのは『ザ・モンスター』などのブライアン・ベルティノ。『エンプティ・マン』などのマリン・アイルランド、『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』などのマイケル・アボット・Jrのほか、ザンダー・バークレイ、ジュリー・オリヴァー=タッチストーンらが出演している。

あらすじ:農場を営むテキサスの実家から離れ、別々に暮らすルイーズ(マリン・アイルランド)とマイケル(マイケル・アボット・Jr)の姉弟。病身の父親の状態が良くないと聞かされた彼らは、長らく帰っていなかった実家を訪れる。最期を迎えようとする父親を見守っていた母親は、二人の姿を目にするや「来るなと言ったのに」と突き放したような態度を取り、その晩首をつって死ぬ。そのことをきっかけに、姉弟に恐ろしい出来事が次々と降り掛かる。

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真夜中の羊小屋で始まるこの作品、ぶら下げられた空き瓶などの防犯対策をよそに、なにかその空間に邪悪な気配を感じさせる。
そんな農場のあるテキサスの片田舎へ、ルイーズとマイケルという姉弟が帰省してくる。
鼻に管を通され、寝たきりの彼らの父親を心配しての事なのだが、付き添いの看護師に、彼等の母親は言い捨てる、「来るなと言ったのに。来てもしょうがない」って(爆汗)・・・。
案の定、帰省してきた姉弟に母親はすんごく愛想がなく、その姿に驚くルイーズに対し、少し前に帰省していたマイケルは、「もっと早くからそばにいてあげればよかった」と後悔の念を滲ませる。

この作品は月曜日から日曜日までが各チャプターで描かれるのですが、火曜日には台所で人参を切っていた母親が自分の指もついでに切り刻み、その勢いで首吊り自殺を遂げる。
そこから姉弟は、現実とも錯覚かも区別がつかない、恐ろしい出来事の数々に悩まされる・・・というお話。

この映画は,音やいきなり何か出して脅かすという演出がモロに恐怖映画なのですが、「何かあるぞ」とは匂わせておいて、どういう映画なのかという輪郭の掴みにくい作品で、劇中で姉弟に変な警告をする聖教者が登場するように、若干の宗教色が余計に難解な印象を与える。
しかも最悪な事に、「結局は何かの力によって家族全員死に追いやられる」という理由が一切説明されないという(爆汗)・・・。お客さん、エンドタイトルが始まった途端に、“われ先に”と逃げるように帰る(超爆)・・・。

コレ、今年何か別の映画であったパターンやなあと、考えてみたら、痴呆症老人の徘徊をホラーに仕立てた、エミリー・モーティマー主演の英国ホラー『レリック』に似ていて、根底に、“家族は家族、親は最後までちゃんと面倒みろよ”と言ってるようなホラーなんですよ(汗)・・・。普段から親を粗末にしていると、悪魔に魅入られてしまうぞ・・・みたいなね(爆汗)・・・。
ソコの部分は私のようなアラフィフ世代には、身につまされるというか(爆汗)・・・。
作品本来の解釈を私がおもいっきり間違えていたら、すんまへん(爆汗)・・・。

[2021年、11月28日、『ダーク・アンド・ウィケッド』、梅田ブルク7・シアター④にて鑑賞]

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2021年11月27日、土曜日、TOHOシネマズ梅田・別館の様子です。
私は午前中は仕事、午後から映画鑑賞でした。
映画『ディア・エヴァン・ハンセン』、盛況ですね。場内7割入りというところ。
同じTOHO梅田では他に大きなスクリーンでの上映があったのですが、私は仕事帰りに都合がいい別館での上映をチョイス。


『ディア・エヴァン・ハンセン』
解説:トニー賞でミュージカル作品賞を含む6冠を獲得したブロードウェイミュージカルを映画化。どこにも居場所のない孤独な少年の人生が、とっさについたうそをきっかけに一変する。『ワンダー 君は太陽』などのスティーヴン・チョボスキーが監督を担当。主人公を舞台版に続きベン・プラットが演じ、『メッセージ』などのエイミー・アダムス、オスカー女優ジュリアン・ムーア、『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』などのケイトリン・デヴァーらが共演する。

あらすじ:家でも学校でも居場所のない高校生エヴァン・ハンセン(ベン・プラット)は、ある日自分宛てに書いた手紙を同級生のコナーに持ち去られる。その後コナーは自殺し、手紙を見つけた彼の両親は、文面から息子とエヴァンが友人だったと勘違いする。彼の家族をこれ以上悲しませたくない一心で、思わずエヴァンはコナーと親友だったとうそをつく。彼らに聞かれるままに語ったありもしないコナーとの思い出は、人々を感動させSNSを通じて世界中に広がっていく。


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私は首から上の機能で言えば、鼻以外はアウトなので、すっかりコミュ障になってしまった。
動物としてのコミュニケーション能力を使おうとしないから退化したわ(爆汗)・・・。
でもね、この映画の主人公である高校生のエヴァンを見ていると、私と違う意味でコミュ障が酷くて、エヴァンがもし私の息子であったりとか身内なら、大いに心配する。と思ってこの作品を観たら、感情移入しやすかったですね。

シングルマザーで看護師の母親(ジュリアン・ムーア)に育てられた一人息子エヴァン・ハンセンは、М・ナイト・シャマランそっくりのクラスメイトと仲が良いのですが(汗)、そいつにも「俺たちは親友じゃないぜ」って、クソ意地悪を言われてるような少年なので、対人関係に臆病になりすぎ、大人で言うところのうつ病(社会不安症)になってしまっている。
そんなエヴァンは心配した母親の勧めでセラピーを受けているのですが、その中の課題で自分宛の手紙を書いたところ、その手紙を出くわした問題児の同級生コナーに持ち去られてしまうんですね。

後日、校長に呼び出されコナーの両親と対面させられたエヴァンは、コナーが自殺した事、コナーのポケットから遺書代わりにエヴァンに宛てた手紙を発見した事をコナーの両親から知らされる。そこでエヴァンはね、その場の雰囲気に流され、コナーの両親を落胆させたくないから、優しい嘘をついて、コナーとの“ありもしない2人の思い出”を語ってしまう。
コナーとのメールも偽装して、問題児だったが亡きコナーの思い出にすがるコナーの両親はエヴァンにコナーの面影を求め、エヴァンはコナーとは仲違いしていたが、自分が密かに想いを寄せていたコナーの妹ゾーイ(ケイトリン・デヴァー)とも仲良くなる。
優しいクラスメイトたちにより、問題児コナーの追悼会が開かれる事となり、故人の親友としてスピーチをしたエヴァンですが、緊張とスピーチの内容が嘘なので、うまくできない。
ソコで登場するのが、私が大嫌いなんセリフを歌って聴かせるミュージカルなのですが・・・。

吉本新喜劇で私が大好きな女優さん、未知やすえさんは、真面目な長セリフは噛み倒すクセに(笑)、彼女のキレ芸である、「お前らちょう待ったらんかい~!」に始まり、「鼻から割り箸ツッコんでカックン言わしたろか!」みたいな悪態なら、どんなに長くても立て板に水の如くスラスラ言えるらしい(爆汗)・・・。
この映画で、その未知やすえさんのキレ芸のごとく、登場人物たちの心の叫びを代弁するのが、登場人物たちの歌(セリフ)なんです(爆汗)・・・。
人に対して一歩踏み出す勇気が、この作品では歌になっている。それが実に優しい効果になっている。

エヴァンの嘘を歌った動画は拡散され、同じ孤独に共鳴した若者たちによって、エヴァンは一躍人気者になる。
しかし、その嘘はバレてしまい、コナーの家族も大きく落胆させる。
この作品が素晴らしいのは、思いやりの嘘で人々の心を繋いだエヴァンは、逞しく成長する。
嘘を自分から正直のバラしたエヴァンはどうしたでしょうか?
この映画は現代社会における悩める若者へ送られたエールやと思いますが、嘘を事実化する為に奮闘するエヴァンの行いには、素直に感動できる。
経験値を積んで強くなる事、成長する事ってこういう事なんやと見せてくれるドラマの後味は清々しい。もう歌わなくてもええんちゃうか?(超爆)・・・。

[2021年11月27日、『ディア・エヴァン・ハンセン』、TOHOシネマズ梅田・別館スクリーン⑩にて鑑賞]

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『この子の七つのお祝いに』
解説:第一回横溝正史ミステリー大賞を受賞した斉藤澪の同名小説を映画化。大映~ATGで数々の作品を手がけた増村保造が脚本・監督を務め、主にテレビドラマで活躍した松木ひろしが共同で脚本を執筆した。赤を基調とした画面が印象的で、岸田今日子の演技が多くの観客に衝撃を与えた。  

あらすじ:ルポライターの母田耕一は、磯部大蔵大臣の私設秘書である秦一毅の身辺を探っていた。だがその矢先、秦の家で働いていたお手伝いが殺されてしまう。手型占いをしているという秦の内妻の青蛾を追う母田は、後輩の須藤に連れて行かれたバーのママゆき子と知り合うが、そのあと何者かに殺害されてしまった。須藤は母田の仕事を引き継ぎ調査を進めるが、青蛾も変わり果てた姿で発見される。やがて須藤は、ゆき子から驚くべき過去を知らされるのだった。

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映画『砂の女』や、アニメ『ムーミン』の声でお馴染みの個性派女優・岸田今日子さんは、1974年公開の封印映画『ノストラダムスの大予言』での朗読だけでも、当時子供だった私を震え上がらせてくれたものですが(汗)・・・。
この映画では、その岸田今日子さん演じる真弓という女は病弱の寝たきりで、ボロアパートの一室でもうすぐ7歳になる娘と暮している。
真弓は娘を添い寝させ、わらべ歌「とおりゃんせ」を子守唄代わりに口ずさんだあと、「あなたが大人になったら、私とあなたを捨てたお父さんを探し出して、必ず復讐してね」と言い聞かせる(汗)・・・そんなもん、娘は恐ろしくて寝れるかい(爆汗)・・・。
そして娘が七つの誕生日を迎えた日に、真弓は布団を血で真っ赤に染めるカミソリ自殺を遂げる・・・。そんなトラウマ必至の場面が、この映画のツカミなんですよね(爆汗)・・・。

この映画の序盤を牽引する、ルポライターの母田(杉浦直樹)は、大臣秘書の秦(村井国夫)と、秦の内妻で、手相占いで有名な青蛾(辺見マリ)の周辺を探っていた。
秦の家で勤めていたお手伝いの女(あの“後ろから前から”の畑中葉子さん)が、無駄に乳丸出しの姿で惨殺されたから(汗)・・・。
この昼下がりのサスペンス丸出しのお話は、ハチャメチャに妖しく迷走する。
母田はひそひそ話が出来る店だとして、後輩の須藤(根津甚八)に紹介されたバー「ゆき」のママ・ゆき子(岩下志麻)の事を、「愛想の無い女だな」なんて言いながら、店に通ううちにすっかりねんごろになってる(笑)・・・。
ところが、頼れる主人公だと思われていた母田はそれまでの事件の被害者たちと同じように、切り裂かれて殺される。
母田の調査を引き継ぐ形になった須藤は、「そんなむちゃくちゃ都合のええようにサスペンスが繋がっとったんかい!」という、驚愕の真実にぶち当たる(爆)・・・。


ハイっ!ここからはネタバレ全開です。観覧は自己責任で・・・。


この映画の主役と言える、岩下志麻さん演じるゆき子は、「怪しい」とか「あんたが実は」とか、「犯人はあなたですね」という美味しい部分を根こそぎ持っていく(爆汗)・・・。
しかもタチが悪いのは、本人が自分の本当の正体(出生の秘密)に気づいていないという(超爆)・・・。ラストに明かされるゆき子の正体から逆算すると、よう最初にバーのママさんに収まっとったな!と。
そのウルトラCにこそ最大のミステリーを感じるという(爆汗)・・・。

私、子供の頃の休日の昼下がりだとか、体長を崩して学校を休んだ午前中などに、よく放映されていた昔の日本映画を楽しんで見ていた。
で、コレ面白いなと思う作品は、勝新太郎さんや若尾文子さんの作品等を手掛けていた増村保造さんの監督作品が多かった。
この映画は、その増村監督が最後に取った劇場用映画作品でした。

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2021年11月23日、火曜日(祝)、なんばパークスシネマの様子です。
なんばパークスシネマの鑑賞ポイントが溜まったので、無料鑑賞。
予告編でそそられた細野晴臣さんのライブドキュメンタリー映画、『サヨナラ アメリカ』と迷いに迷って、時間が早い方の『皮膚を売った男』をチョイス。お客さん私を入れて10人ほどでした。



『皮膚を売った男』
解説:自由を求めて自らがアート作品となる契約を交わした男の運命を描き、第93回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされた人間ドラマ。チュニジアのカウテール・ベン・ハニア監督が、理不尽な世界のありようをあぶり出す。主演のヤヤ・マヘイニは本作で第77回ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門で最優秀男優賞を獲得。そのほか『Uボート:235 潜水艦強奪作戦』などのケーン・デ・ボーウ、『オン・ザ・ミルキー・ロード』などのモニカ・ベルッチらが出演する。

あらすじ:難民の男性サム(ヤヤ・マヘイニ)は、偶然出会った現代アートの巨匠から意外なオファーを持ちかけられる。それは大金と自由を手に入れる代わりに、背中にタトゥーを施し彼自身がアート作品になるというものだった。展覧会の度に世界を行き来できると考えた彼は、国境を越え離れ離れになっていた恋人に会うためオファーを受ける。アート作品として美術館に展示され、高額で取引される身となったサムは、やがて精神に異常をきたし始める。


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2020年、チュジニア・仏・ベルギー・スウェーデン・独・カタール・サウジアラビアの合作で製作された事を、この映画の冒頭は白地に白い文字で表記され、映画『燃えよドラゴン』のクライマックスシーンに登場したような、入り組んだ鏡張りの部屋に出るタイトルバックからして、むちゃくちゃアート志向だと分かる。
画面はすぐに留置場らしき場所で自由を奪われた小柄で筋肉質の男が、同じような男たちが雑魚寝する房に移される様子へと変わる。

最初の舞台はシリア。恋人アビール(ディア・リアン)の家に挨拶へ行く為に、共に電車に乗るサム(ヤヤ・マヘイニ)は、車内でプロポーズして周りに祝福されたときに、勢いあまって“革命”だの“自由”だのを声高に叫んだおかげで、なんと逮捕されてしまうんですね。
留置場の警官の粋な計らいで脱走に成功したサムは、裕福な男とお見合いするアビールに別れを告げ、自らは生き延びる為にシリア難民となってしまう。

一年後・・・ベルギーで仲間と食べ物を漁りに美術館に潜入したサムは、個展のアシスタントであるソラヤ(モニカ・ベルッチ)を通じて出会った芸術家ジェフリー(ケーン・デ・ボーウ)から、「君の背中にタトゥーでアートを施すから、私の生きた作品として契約しないか?」と持ち掛けられるんですね。リモートで、今は人妻になっているアビールとコンタクトを続けるサムは、アビールに逢える自由欲しさに、自らの背中をジェフリーに差し出す。
“アート作品”としてビザと大金を得て、五つ星クラスのホテルで暮らすサムなのですが、作品として展示されている間は座っていなくてはならないので、まったく自由ではない(笑)・・・。そこからはサムの辿る運命が描かれていきます。

この映画はアート作品となる事で自由を得たように見えるサムを通して、戦争、難民問題に人種差別という社会問題を浮き彫りにし、人間の自由の意味を問う。
しかし・・・。
私、もっと過激でヘヴィだと思っていたこの作品、実は軽妙でユーモアを湛えた人間味溢れる物語で、傑作なのはもちろんのこと、むちゃくちゃ私好みのヒューマンな映画だった。

この映画の根底にあるふたつの柱が素晴らしい。
ひとつはこのアート作品を通じて、観た人が戦争によって奪われる自由を考えるべきだし。
もうひとつは、片方が結婚しようが自由を奪われようが、この映画のアタマからケツまで、サムとアビールは、ず~~っと一途に愛し合っているという事。見事なまでに(涙)・・・。
この映画はベルギーの美術家の実在の作品にインスパイアされた女性監督の作品なのですが、フィクションの映画的盛り方が面白くて、芸術点も凄く高いと思う。

[2021年、11月23日、『皮膚を売った男』、なんばパークスシネマ・スクリーン①にて鑑賞]

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2021年11月21日、日曜日、大阪ステーションシティシネマの様子です。
なぜ今年から午前十時の映画祭は満席にならなくなったのか?値上がりしたからちゃいますか?(汗)・・・。
本日の『グッドフェローズ』もお客さんボチボチでした。





『グッドフェローズ』午前十時の映画祭11
解説:巨匠スコセッシがスピーディーな語り口と鮮やかな編集テクニックを駆使して描いたNYマフィアの実録年代記。ロバート・デ・ニーロとは6本目の顔合わせとなった本作で、スコセッシはギャング映画に初挑戦。後の監督作『カジノ』『ギャング・オブ・ニューヨーク』『ディパーテッド』『アイリッシュマン』の原点となった。

物語:1955年、ブルックリンの貧しい界隈に育ったヘンリー・ヒル(レイ・リオッタ)は、マフィアの世界に憧れていた。12才から地元のボス、ポーリー(ポール・ソルヴィノ)の下で働き始めたヘンリーは、やがてトラック強奪専門のジミー(ロバート・デ・ニーロ)、強盗と殺しが得意なトミー(ジョー・ペシ)と共に、闇煙草の密売、クレジットカード偽造、違法賭博、ノミ行為、八百長試合の手配など、あらゆる犯罪に手を染めていくが―。

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若い頃から映画ファンだった私は、映画興行界が年間で一番冷え込むという、秋からお正月までのちょうど今の時期がスランプ機で、映画の前売り券を買っても劇場に行くのが億劫になってスルーしたという作品が幾つもあった。マーティン・スコセッシ監督の『グッドフェローズ』という映画も、そんな一本だった。
“気の置けない仲間”という意味の原題をちゃんと発音すると、“グッドフェラ”になるこの映画(爆汗)、私はまったく初めての鑑賞でした。

1970年、クールなジミーと小柄で短気なトミーを乗せた高級車を、持ち主のヘンリーが運転していると、ヘンリーが、「この変な音をなんとかしないか?」と呼びかける。
車を止め、3人が物音のするトランクを開けると、顔面を踏みつぶされた恰幅の良い男がもがき苦しんでる。「こいつ、まだ死んでいやがらねぇ」と憤るトミーは包丁でサクサクと男を刺し、ジミーが拳銃を撃ち込んでとどめを刺す。
そこから物語はヘンリーを語り部に、1950年代へと遡る。

頑固親父と肝っ玉母さんに、兄弟がいるヘンリーは、普通の家庭に生まれ育つのですが、まるで少年が野球選手に憧れるように、警察でさえ頭が上がらない街を牛耳るマフィアの世界に憧れている。街のボスであるポーリー(ポール・ソルヴィノ)から信頼される“おつかい”になったヘンリーは、学校の無断欠席を叱る父親と決別し、そのまま同年代のトミーと共にマフィアの構成員となり、憧れのジミーともつるむようになる。
やがて勝ち気なカレン(ロレイン・ブラッコ)と結婚して、愛人と共に組で禁じられていた麻薬に手を染めて儲けるヘンリーですが、裏切りと保身の為に、グッドフェローズを敵に回すまでに至ってしまうという物語を、これぞ映画のマジック!という心地よい語り口で魅せてくれる。
この映画、後のマーティン・スコセッシの作品群から“モブ・マフィアもの”のはしりと云われている作品ですが、間違いなく傑作映画やね。

終盤、大きな強奪事件を数人で成功させたジミーたちなのですが、急にド派手な色のキャデラックを奥方名義で買ったり、同伴してきた奥さんにミンクのコートを買って着せてる仕事仲間にジミーがキレてるシーンからして、地に足のついた人間が描かれているから、見ていて飽きない。ジミーは、「デカい強奪事件の直後に、派手に金を使ってたらバレバレやん!」って、むっちゃ怒ってんのよ(笑)・・・。
あと、小柄だからすぐにナメられるっちゅうて、すぐにキレて相手を殺すトミーの残虐性に、同じく小柄でいらちの私はメガトン級の共感!
ツボを持ったホームランバッターの、見事な放物線を描いたアーチのような作品に、私はひたすら見とれた。

[2021年11月21日、『グッドフェローズ』、大阪ステーションシティシネマ・スクリーン⑪にて鑑賞]

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