本日は、少し変わったテイストのイギリス産SF映画を紹介します。
1974年公開の古い映画なんですが、SF作品にしては珍作の部類に入ると思う(汗)
もの凄~~く知的な世界を、野獣なんかヘタレなんか分からんオッサンが壊してしまうという作品です(笑)
↑『未来惑星ザルドス』のB5チラシです。
↑関西版新聞広告です。シネラマの巨大スクリーンで公開されたんですね。
↑A4パンフです。
『未来惑星ザルドス』
解説:核戦争によって荒廃した未来社会。人類は一部のエリート=ボルテックスによって支配され、文化水準は大きく後退していた。ボルテックスの手先だったゼッドは、ある日、支配体制に疑問を持ち、ボルテックスの正体を調べ始める。やがて、神と思われていた彼らが、実はひ弱な科学者であったことが判明する……。未来世界を幻想的にな映像で描いたカルトSF。
あらすじ:2293年の未来、人類は不老不死の「エターナル」と死のある「獣人」に分かれていた。獣人は荒廃した土地に住み、ボルテックスという土地に住むエターナルのために食料を生産していた。ふたつのグループ間の接点はザルドスという巨大な空を飛ぶ石の頭によってなされ、ザルドスは穀物を受け取る代わりに獣人の中から選んだエクスターミネーターという殺し屋集団に武器を渡していた。エクスターミネーターのゼッド(ショーン・コネリー)はザルドスを操るエターナルのアーサー・フレインを殺してザルドスに乗り込みボルテックスへ旅立つ。
ボルテックスに着いたゼッドは2人のエターナル、コンスエラとメイに出会い、ほかのエターナル達と暮らし始める。
やがてエターナルの安逸だが不毛な暮らしに耐えられなくなったゼッドは、仲間のエクスターミネーターたちを呼びこむ。ゼッドとエクスターミネーターたちはボルテックスを地獄絵図に変えるが、エターナルたちはむしろそれを喜んで受け入れて滅びていく。そしてゼッドはザルドスの中でコンスエラと所帯を持ち、ともに老い、ともにこの世を去っていった。
宇宙をバックにしたこの作品の宣材を観ると、ピッカピカのスペーシー・ドンパチが観れる作品やと期待してテレビ放映を観たら、ピカピカしてたのはショーン・コネリーのデコやったという(汗)・・・。水野晴郎氏がテレビ解説でベタ褒めしてたわりにはイメージが狂いすぎて、私が初めて観た子供時代には大いに落胆した作品なんですよ。
この記事で、上記の長いあらすじを載せたのも、ストーリーが少し複雑だから。
ところが、何か惹かれる印象が残っていたので、数年前にDVDを衝動買いして再見してみたら、私がつまらんと思っていた部分が凄く面白くて、今では半年に一回は鑑賞する作品になった。
この作品、冒頭から巨大な石の頭ザルドスが神のごとき浮遊し、殺戮が繰返される大陸と、ボルテックスと呼ばれる不老不死のユートピアの間を往復しています。
ある日、地上の殺し屋ゼット(ショーン・コネリー)が、石の頭ザルドスに乗り込み、ボルテックスに侵入するんですが、ゼットは特殊な能力のあるボルテックスの若者たちに簡単に捕えられてしまう。
不老不死のボルテックスのエリート達は、子孫を増やさない為に性を禁じるなど、厳しい制約を設けて暮らしているんですね。彼らはゼットを研究材料としてペットのように扱うんですが、ゼットの出現は、ボルテックスの秩序を徐々に乱していくというお話しなんです。
この映画ね、理不尽とも言える規律で守られたユートピアをショーン・コネリーが壊すから面白いんじゃなくて、私的にはユートピアの若者たちを翻弄したショーン・コネリーそのものが面白いんですわ(笑)・・・。
007のジェームズ・ボンド役を降板し、新しい路線を開拓しようと頑張るショーン・コネリーの男臭さが大爆発!!(爆)・・・男というより雄(オス)ですわ雄(笑)・・・。
この作品のゼットを演じたショーン・コネリー、オールバックのロン毛にヒゲ。・・・赤いふんどしみたいな布をまとい、胸板には王様のたわしのごとき胸毛がワサ~って(爆)・・・。
昔、「女性をその気にする香水」ってヤツが通販で売られていたんですが、ショーン・コネリー演じるゼットの身体からは、その香水みたいなヤツが絶対に放出されとるね(笑)・・・。
これほど雄のフェロモンがベロベロの男って、我が日本では藤岡弘ぐらいでしょう(笑)・・・。
この作品の傑作シーン・・・性を禁じられたボルテックスの若者たちが、ゼットの記憶を頼りに男性の勃起を勉強する場面が最高なんです。(ボルテックスの若者は進化して勃起しない)
シャーロット・ランプリング演じるコンスエラが若者達の前で講釈をたれ、ゼットの記憶にあるエロい映像をバックにみんなの視線がゼットの股間に集中するわけ(爆)・・・。
(『ルパン三世VSクローン人間』でも、ルパンの頭の中を映像化したらエロだらけって名シーンがあった)
すると、ゼットが反応して勃起したのはエロ画像ではなく、コンスエラの身体だったというオチ(爆)・・・数十人の若者に股間をガン見されて起つ男も凄いですが(爆)・・・。
自らの姿に反応して勃起した男に、コンスエラは理性を狂わされていく・・・「なぜ、この男は私を見て勃起したのか?」って(爆)・・・。そこからボルテックスは崩壊していく(超爆)
こんな内容でSF映画やからこの作品は凄いわ(笑)
どこかユーモラスなショーン・コネリーの演技は、他に例を見ない唯一無二のもの。
最後に念を押すと、実にイギリス映画らしい知的で独創性に富んだストーリーや、チープなSF風味のアクションが面白いんじゃなく、ショーン・コネリーがオモロい映画です(笑)・・・。
面白い俳優、ショーン・コネリーを観て楽しむ映画なんです(笑)・・・。
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冒頭、殺戮が繰返される地上の上を、石の頭ザルドスが浮遊している。
石の頭ザルドスは、地上とユートピアを往復する意外にショボい乗り物やという事がすぐに分かる(笑)
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殺し屋ゼット(ショーン・コネリー)は神のように崇められたザルドスに疑問を抱き、乗り込んでみた(汗)
書いたらカッコいいんですが、実際は、「これ、ただの乗り物ちゃうん?一回乗ってみたかったんや」みたいなショーン・コネリーの雰囲気が良い(笑)
ザルドスの中には、なぜか真空パックされた人間の裸体がいっぱい。乗ってみたいな(汗)
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ザルドスに乗ってボルテックスという不老不死のユートピアに潜入したゼット。
見るモノすべてに感心していたら、ボルテックスの住人にあっさり捕まってしまう。
二人の女性科学者に、地上でのレイプの様子を透視され、焦るゼット。彼は実験材料にされてしまう。
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見てください、男というか、雄のフェロモンがベロベロ~!って感じのショーン・コネリー演じるゼット。
なんか人間なのか?って疑問さえ浮かぶアニマルぶり(笑)
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自分を見て勃起したゼットに理性を狂わされるコンスエラ(シャーロット・ランプリング)
考えてみたら、相手を見て起つって、男性から女性への最大の賛辞やと思うね。
コンスエラはゼットに研究材料として接するうち、人間本来の本能に目覚めていく。
今も現役バリバリのシャーロットさん、スレンダーで魅力的な女優さんです。
この人、凄くクールで知的に見えるのに、いろんな映画で脱ぎまくり・・・そのギャップが私は大好き。
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ボルテックスには、いろんな世界が存在する。
規則を乱した者が罰を受けて老化する老人エリアや、無気力人間エリアもある。
左下の写真に注目!!
本当に無気力なのかを確かめる為に、ゼットはいきなり女性の乳を揉む(超爆)どんなSFやねん(爆)
他にもっと確かめる方法があるでしょうに・・・。
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ボルテックスは、ゼットが密かに呼んだ殺し屋たちの襲撃で崩壊してしまう。
ゼットとコンスエラは、人間本来の営みを通し、添い遂げて生涯を終える。
この作品、凄く哲学的な面も持ち合わせていて、なかなか深い風刺の効いた作品ですわ。
お金が掛かっていないのは歴然の作品なんですが、70年代らしい色彩感覚がチープかつポップで面白い。
物語を左右する書物として、『オズの魔法使い』が登場するのも面白いですね。
私の感覚で乱暴に言うと、本が好きな人はハマる作品やと思う。
不思議な世界観で人間を鋭く描いたという部分で、やはりSFを感じさせてくれるという、まさに珍作です。